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レイ・ダリオ氏:米国債の買い手がいなくなり、米国政府の財政は破綻する

世界最大のヘッジファンドであるブリッジウォーター・アソシエイツの創業者レイ・ダリオ氏は、「Bloomberg’s David Westin at Bloomberg Invest New York」に出演して、いずれ米国債の買い手がいなくなり、最終的にはFEDが米国債を買うしかなくなると指摘しました。

長期サイクルの終盤で起きること


レイ・ダリオ氏は、長期サイクルの終盤で起きることとして、財政ファイナンス、国内対立、覇権国家の対立をあげました。

歴史上は繰り返してきたが、我々の世代では経験していなかったことが3つ起こっている。膨大な量の財政ファイナンス、貧富の差の拡大に伴うポピュリズムの台頭などの国内対立、日米の権力対立と戦争の可能性だ。

さて、財政ファイナンスが行われるほど、インフレ的な経済になります。

このとき、債権者はインフレ率を上回るリターンを求めるため、インフレを抑えようと思うと、金利がインフレ率を上回る(実質金利がプラスになる)必要があります。

金利は、債権者と債務者の両方を満足させる水準でなければならない。つまり、金利は債権者に実質リターンをもたらすほど高くなければいけないということだ。

そうでなければ、債権者は国債などを買ってお金を貸すよりも、土地や物を買っておいたほうが良いからです。そのため、ダリオ氏はお金が無料の時代は終わったと述べています。

私たちは、インフレが起こったため、実質金利が必要な段階に移行した。私たちが過去にみてきた(お金がコストなしに借り放題の)時代は終わった。そこには大きな調整が行われている。

誰が米国債を買い支えるのか


さて、では「金利ゼロのお金」の恩恵を享受してきたのは誰でしょうか。

スタートアップ界隈やゾンビ企業など、いろいろな経済主体がその恩恵を享受してきたはずですが、最も大きな経済主体は米国政府でしょう。

貧富の差を縮めるために、政府は稼ぐよりもたくさんの出費を行うので、多額のお金を借りて、多くの国債を売った。そしてFEDが国債を買った。だから、負け組は個人の家計ではない。個人の家計は改善したからだ。この流れで損をしたのは、国債を抱えていた人たちだ。中央銀行はたくさん損失を出したし、商業銀行もたくさん国債を買っていたため、銀行破綻の問題が起きた。

最近騒がれている予算上限問題自体は、大したことではありません。国会で予算上限を引き上げれば終わりというテクニカルな話だからです。

もしも米国政府に本当の意味での予算上限があるとすれば、それは米国債の買い手の有無です。米国債の買い手がいなくなって、資金を確保できなくなることでしょう。ダリオ氏は、それこそが長期サイクル終盤に起こることだと指摘しています。

私は、今は典型的な長期サイクルの終盤にあると考えている。あまりに多くの債務を生み出して、その買い手がいなければ、債務危機に陥る。私たちは、いま多くの国債を売らなければいけないが、買い手がいるかどうかというのが問題だ。大きな機関投資家は国債で損をしたので、その保有量に変化が起きている。それから、地理的な変化も起きている。いくらかの国は経済制裁を恐れている。

これまで安心して米国債を買ってきた銀行などで、金利上昇(米国債の値下がり)によって破綻が起きたことは、銀行や機関投資家たちに米国債を保有するリスクを改めて認識させることとなりました。

また、中国のような新たな大国が台頭して米国の地位が落ちることも米国債の買い手の減少につながります。

加えて、対ロシアの制裁などを通じて、米国の資産がいざとなれば凍結される可能性があることに世界各国の政府が気づいたこともポイントです。日本やヨーロッパのような西側陣営は米国政府による資産凍結を気にする必要がないですが、その他の多くの国々にとっては米国債を保有するリスクを再認識する機会となったでしょう。

以上のような複合的な理由から、いつまで米国債の買い手がいるかという点について、ダリオ氏は疑念を呈しているのです。

米国政府の財政については、少し違う角度ですが、ドラッケンミラー氏も今のままでは持続不可能であると指摘していました。

最終的にはFEDが米国債を買い、ドル安を招く


さて、米国債の買い手が本当にいなくなってしまえば、米国債はいくらでも売られて、米国の金利はいくらでも上がることになります。これが自由な市場経済というものです。

しかし、5%程度の金利でも米国の銀行がバタバタと倒れているわけですから、これ以上に米国金利が大きく上昇すると、米国経済は到底耐えられないでしょう。

そのため、もしも本当に米国債が売られて金利が上昇するような局面があれば、最終的にはFEDが米国債を買うことになるでしょう。しかし、これは典型的な財政ファイナンスですから、ドル安を招くこととなります。

負債があると、債券を売って支払いを行わなければならない。そして、その債券への需要は低下している。そうすると、金利が上昇するか、中央銀行がやってきてお金を印刷しなければならない。

そのため、少し長期の視点に立った場合、投資家は米ドルや米国債だけでなく、グローバル企業の株式、ゴールドなどのコモディティ、財政が健全な先進国の通貨などにも資産を分散して保有することが望ましいといえます。

以前、ガンドラック氏は、次の景気後退には米国債が買われるだろうが、景気後退時に米国債が買われるのは今回が最後になるかもしれないと述べていました。こうした大局的な視点も持っておくべきでしょう。

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