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レイ・ダリオ氏:信用収縮による債券売りが金利上昇かハイパーインフレを招く

レイ・ダリオ氏がModern Wisdom 620の動画に出演していたので、その中からポイントをお伝えします。

レイ・ダリオ氏の経済見通しは、たびたび紹介してきており、今回も内容としては変わりませんが、少し丁寧に解説されているため、参考になれば幸いです。

多くの企業がバランスシートを毀損している


そもそもシリコンバレー銀行で何があったかは、過去に以下のニュースレターでも解説していますが、改めてレイ・ダリオ氏の言葉も読んでおきましょう。

レイ・ダリオ氏の説明は、以下の通りです。

シリコンバレー銀行の件をみると、それは彼ら特有の問題ではなく、世界中で起こっている問題だ。銀行が預金を受けて、預金金利よりも高い金利のあった米国債をたくさん買った。次に、預金金利が上がり、米国債の価格が下がった。そして経営が破綻した。

次に、レイ・ダリオ氏は、地銀以外にも多くの企業がバランスシートの問題を抱えていることを指摘しています。

それは銀行だけでなく、保険会社や世界中で同じことが起こっている。ヨーロッパでも起こっているし、日本の企業は米国債をたくさん買っている。

銀行に限っていえば、預金という形で資金を調達して、信用創造でレバレッジをかけた上で、米国債などで運用しています。しかし、資金を調達して、資産を獲得して利益を上げるという意味では、あらゆる企業が同じことをしているという点をレイ・ダリオ氏はここで強調しています。

そして、金利上昇によって資金調達のコストが上がり、資産の価格が下がっているというのは米国の銀行に限らず、あらゆる企業やファンドのバランスシートで起こっていることなのです。

債券が売られて金利が上昇する


さて、そのような状況では何が起こるのでしょうか。

起こる確率が高いこととしては、彼らはもうそうした債券を欲しくないし、負債を返すために債券をさらに売る必要に迫られる。負債があると、債券を売って支払いを行わなければならない。そして、その債券への需要は低下している。そうすると、金利が上昇するか、中央銀行がやってきてお金を印刷しなければならない。

ここでレイ・ダリオ氏が指摘しているのは、シリコンバレー銀行が預金(=負債)の流出に対応するために保有債券の売却を迫られたように、普通の企業も負債を返済するために資産(= 保有債券)の売却を迫られるということです。

こうして債券の売り圧力が高まると、債券の価格が下がるので、金利は上がります。これによって、各企業のバランスシートはさらに悪化していくこととなります。

金利上昇を抑えるには中央銀行が買うしかない


債券の売却と金利の上昇のスパイラルは経済を破壊してしまうので、こうした債券価格の下落・金利上昇は防がなければいけません。このとき、金利上昇を防ごうと思うと、誰かが買い支えるしかありません。企業はみんな売りたいわけですから、買い支えられる存在がいるとすれば、それは無限にお金を印刷できる中央銀行でしょう。

実際、FEDはすでに似たようなことを始めています。

レイ・ダリオ氏は、いずれFEDは金利上昇を抑えるために再び債券を買い始めて、それがインフレ第二波を引き起こすだろうと予想しています。

景気サイクルの中で、金融引き締めがドミノ倒しのように悪影響を及ぼして、さらに多くの問題を引き起こすタイミングに来ている。結局、社会の負債が多すぎて、その増加速度も早すぎる。そうした負債を困難を伴いながら返すか、お金を刷って返すしかない。最後には、いつもお金をたくさん刷って簡単に返そうとするが、その分だけお金の価値は希薄化される。それが私の見方であり、スタグフレーション的な環境になるだろう。

なお、以前レイ・ダリオ氏は来年の3月までの1年以内にFEDが金融緩和にピボットすることを予想しています。

結論:メインシナリオは量的緩和からのスタグフレーション


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