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東京都の消費者物価指数(2月)、全体はインフレ減速もコアコアは加速

東京都の2023年2月分の消費者物価指数が発表されました。

今回、エネルギー価格の下落を受けて、「総合」および「生鮮食品を除く総合」はインフレが減速しました。一方、「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」(コアコア)のインフレは加速を続けました。

日本のインフレは、全体的な物価高感が収まってくる中で、今後サービス業や賃金などのインフレがどこまで続くかが注視ポイントとなってくるでしょう。

総合は前年比+3.4%に減速、コアコアは+3.2%に加速


日本全国の消費者物価指数よりも数週間早く発表される東京都消費者物価指数ですが、2月数値は、以下の通りでした。

東京都消費者物価指数の推移(2023年2月分まで)/ 総務省統計局

一番右の2月を見ていただくと、「総合」と「生鮮食品を除く総合」のインフレが減速しているのに対して、「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」のインフレが加速している様子がご覧いただけます。

具体的には、以下のような数値でした。

  • 総合:
    前年比+3.4%(前回:+4.4%)
  • 生鮮食品を除く総合:
    前年比+3.3%(前回:+4.3%)
  • 生鮮食品及びエネルギーを除く総合:
    前年比+3.2%(前回:+3.0%)

エネルギー価格はしばらく前年比マイナスが続く


今回のポイントは、何といってもエネルギー価格が減少に転じたことでしょう。

以下は、過去5年の原油価格チャートです。

WTI原油価格の推移(2023年3月5日時点)/ FRED

エネルギー価格は、そもそも新型コロナ下での金融緩和・財政出動によって上昇していましたが、昨年の2月〜3月にかけてウクライナで戦争が始まったことで、さらに急騰してピークをつけました。その後、6月にもう一度上昇して120ドルにタッチしています。その後、FEDの利上げ効果によって下落に転じています。

インフレ率は前年比で見るため、昨年の原油価格が高かった分、今年の2月〜6月頃にかけては、エネルギー価格は大きなデフレ要因となります。エネルギー価格のデフレは、その他のインフレを今後もある程度まで相殺してくれるでしょう。

前年比マイナスに転じた原油価格(2023年3月5日まで)/ FRED

コアコアのインフレ加速


一方で、「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」、通称コアコアについては、前年比+3.2%で、前回の+3.0%から加速しています。

日本のインフレに関する僕の見方は、以前書いた通りです。輸入インフレが一段落しているので、日本のインフレの終わりは遠くに見えているものの、まだしばらく日本のコアコアはインフレが続くというものです。その理由は、日本政府が企業に対して、円安等による原価上昇分の価格転嫁と賃金上昇を促しているからです。

前回の東京都物価指数に関するレターでも書いたように、賃上げも各企業で相次いで発表されており、賃金も今後上昇してくるでしょう。

日銀の発表している期待インフレ率も上昇を続けています。

日本の期待インフレ率(2023年1月分まで)/ Trading Economics

結論


以上のように、日本のインフレはまだしばらく続くと予想しているので、長期金利上昇の恩恵を受ける銀行株のポジションは基本的には維持したいと思います。

しかし、輸入インフレ率の頭打ち、エネルギー価格のデフレなど、以前と比べると、ポジションを解消すべきタイミングは徐々に近づいているようです。

タイミングを完璧に読むことは難しいので、植田新総裁へのバトンタッチと金融緩和の正常化が意識されるであろう4月頃に向けて、少しずつ時期を分散しながらポジションを利確していきたいと思います。

また、このような原油価格の前年比マイナスの影響が、ノーランディング論の渦巻く米国のインフレにどのような影響を与えるかも考える必要あるでしょう。これについては、明日のニュースレターで考察します。


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