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ISM製造業景況感指数は新型コロナ前後の水準まで後退している

最近は、連日のように景気後退をシグナルしている各種数値をお伝えしていますが、本日もISM製造業景況感指数という製造業の景気を表す指数が悪化している様子をお伝えします。

ISM製造業景況感指数は新型コロナ前後の水準まで後退


4月3日に発表された3月のISM製造業景況感指数は予想の47.6を下回る46.3でした。前回は47.7であったことから、1.4ポイントの下落となります。

ISM製造業景況感指数は、全米の製造業の300人以上の購買・供給管理の役員に、生産、新規受注、在庫、価格、雇用などの項目について、前月と比較して「良い」、「変わらず」、「悪い」のいずれかを選択してもらい、その結果をパーセンテージで表したものです。

この指数が50を割り込むと製造業の景気が後退していることを示すので、2022年11月以降は一貫して製造業の景気が悪化していると読むことができます。

ISM製造業景況感指数の推移(2023年3月分まで)/ TRADING ECONOMICS

過去をふり返ると、46といった水準まで下がったのは新型コロナ前後以降で初めてです。当時は、2020年2月に50.1だったところから、3月には49.1と50を割り込み、4月〜5月には41.5、43.1という低い水準に落ち込みました。その後、早期に巨大な金融緩和が打ち出されたことから、6月には52.6と景気拡大基調に戻っています。

内訳をみても景気後退は加速している


ISM製造業景況感指数を構成する各要素を個別にみても、景気後退が加速している様子を見て取ることができます。

ISM製造業景況感指数の要素内訳(2023年3月分)/ ISM

特に新規受注(New Orders)や雇用(Employment)、価格(Price)、新規注文(New Export Orders)といったあたりが2ポイント以上の下落でスピード感を伴って悪化しています。

在庫(Inventories)は-2.6と売れているように見えますが、これは価格(Price)が-2.1と悪化していることをみると、今後の景気後退に備えてキャッシュを手に入れるために、値引き販売をして在庫を処分したということでしょう。その分は顧客側の在庫(Customer's Inventories)に+2.0と積み上がっているので、流通業者が在庫を抱えている形になっていると予想できます。

製造業の雇用者数や賃金は伸びが減速している


せっかくなので、製造業関連の他の数字も確認しておきたいと思います。

まず、製造業の雇用者数はまだ増加しているものの、その伸び率は前年比+2.5%減速しています。最新の数値は金曜日の雇用統計で発表されるので、またそちらもウォッチしていきたいと思います。

製造業の雇用者増加率(2023年2月分まで)/ FRED

また、製造業の賃金インフレ率をみると、前年比+3.7%と賃金はまだ上昇しているものの、その上昇率は昨年と比べて減速していることが読み取れます。

製造業の賃金上昇率(2023年2月分まで)/ FRED

なお、これらの数値は2月のものなので、シリコンバレー銀行の破綻やクレディスイスの合併といった銀行混乱の影響を含んでいません。3月分のISM製造業景況感指数で雇用の数値が-2.2と悪化していることを考えると、これらの雇用に関する数値も今後は悪化していくと考えるのが自然でしょう。

やはりガンドラック氏やレイ・ダリオ氏が指摘するように、アメリカは景気後退に加速的に向かっている、というのをメインシナリオで考えておいて問題なさそうです。

米国債市場は、すでに景気後退を織り込み始めており、一時は5%近くまで上昇していた米国2年国債金利も4%を切る水準となっています。

米国2年国債金利(2023年4月4日執筆時点)/ Investing.com

結論:米国債の投資妙味はやや薄れたが保有継続


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