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地政学リスクの高い時代に、レイ・ダリオ氏の考える理想の投資先とは

written by @mercurys_assets

今回のポイント

  • 分散投資の重要性:ダリオ氏は、リスクの80%を削減しつつ期待リターンを維持するためには、相関性の低い異なる資産に分散投資することが重要であると強調した。彼の「オールウェザー戦略」は、株式、債券、コモディティなどの様々なアセットクラスにまたがる徹底的な分散を特徴としている。
  • 財政が健全な国への投資:ダリオ氏は、現在の経済状況下で良いパフォーマンスを発揮する可能性が高いのは、良好な財政状態にある国々であると指摘している。
  • 社会的対立の少ない国々への投資:ダリオ氏は、国内の左右対立が顕著な国々では、資産の没収などのリスクが高まる可能性があるため、そのような国々に投資することは避けるべきだと述べている。また、戦争に巻き込まれる可能性が低い中立国への投資を推奨している。歴史的に見て、中立国は戦争に勝った国よりも良いリターンを生み出すことが多いと彼は指摘している。
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前提として重要なのは分散投資


今回は、レイ・ダリオ氏のMoney Maze Podcastによるインタビューからピックアップした内容をお届けする。

インタビュー内で「地政学的なリスクが高まっているが、どこに投資をするのが良いか」と問われたレイ・ダリオ氏は、まず前提として分散投資が重要であることを改めて強調した。

私が過去の過ちを通じて学んだのは、リターンの見込める良い投資先、それもお互いに相関がないものに分散投資をすれば、期待リターンを削ぐことなくリスクの80%を取り除けるということだった。

レイ・ダリオ氏のブリッジウォーター・アソシエイツといえば、革新的な運用手法を次々と生み出したことで知られているが、そのひとつが「オールウェザーセ戦略」などの名前で知られるリスク・パリティ・アプローチである。

株式投資においては投資先を分散するとリスクが減ることは今では常識であり、分散の効いたインデックス投資が株式投資の主流となっている。しかし、レイ・ダリオ氏の分散投資は何歩も先を行っている。

どのような天候(経済状況)でもリターンを生み出すことを目指す「オールウェザー戦略」では、まず株式から債券、コモディティまで、あらゆるアセットをどう組み合わせると、どのような値動きとリターンが得られるかを徹底的に分析する。そうして、一定の組み合わせで、一定の値動きとリターンが得られることが確認できる。これがひとつの投資単位となる。

次に、それらの投資単位同士の相関をみる。相関が低い、あるいは逆相関であれば、それらの投資単位を組み合わせることで、それぞれの期待リターンを維持したまま、リスクを減らすことができる。

こうした徹底的な分散投資のアプローチによって、レイ・ダリオ氏の率いるブリッジウォーター・アソシエイツのオールウェザー・ファンドは、リーマンショックの年にも利益を出しただけでなく、2001~2010年の期間には年平均25%という驚異的なリターンを叩き出した。

レイ・ダリオ氏は過去の歴史に学んで経済の見通しを披露する賢人として知られているが、彼は過去に予想を外して自社を潰しそうになったこともある。そのため、彼の主力ファンド自体はむしろどのような環境にあっても安定したリターンを生み出せるような徹底した分散投資のアプローチを採用しているのである。

さて、その上でレイ・ダリオ氏が地政学リスクの肥大化している現状において、どのような投資先を選好しているかについて、3つの観点を与えている。それらの観点を見ていこう。

財政が健全であること


まず、ひとつめの条件は財政が健全なことである。

その国は支出以上の収入があるか。その結果、損益計算書とバランスシートが健全かどうかだ。良い貯金と財政状態にある国は、そうでない国に比べて、今のような時期には良いパフォーマンスを出しやすい。

さて、GDPに対する政府債務の比率は、以下のように多くの先進国で100%を超えている。その中でも日本はだんとつであり、その後をイタリアと米国が追っている。

政府債務の対GDP比率(2023年時点)/ 財務省

日本は金利が低いので、これだけの負債を抱えても現時点では問題がないが、仮にアメリカのような金利水準になれば一発でアウトだろう。

一方で、例えばインドは新型コロナで債務が大幅に増えたとはいえ、まだGDPに対する割合は50%台である。

インド政府の債務対GDP比率(2023年11月23日執筆時点)/ CEIC

こうした国の通貨は今後も比較的安定して推移するだろう。

国内に社会対立がないこと


続いて、レイ・ダリオ氏があげている条件は、国内対立が無いことである。

投資に対するリターンについて言うならば、左翼と右翼の間に国内対立がある場合、(中略)歴史に学ぶと、価格の値動きだけに留まらず、資産の没収などで資産を失いかねない。

自由主義の国家による資産の没収とは、私有財産権を保障する憲法に反するようで信じられないが、実際はたびたび起こっている。

例えば、アメリカでは1930年代にフランクリン・ルーズベルトがゴールドの保有を禁じて、国民の保有するゴールドを全て召し上げた上で、当時はゴールドの兌換紙幣であったドルを国民に手渡した。その後、1970年代にニクソンショックによってゴールドとドルとの交換は停止され、ゴールドを没収された国民は二度とゴールドを取り戻すことはなかった。与えられたのは、不換紙幣となり、価値が大幅に下落したドルだけだった。

日本でも、戦争直後のハイパーインフレ期には預金封鎖が行われて、国民の資産が没収された。

つまり、国民資産の没収というのは決してあり得ないことではなく、定期的に行われる行事なのである。それは国内対立が顕著である乱世において起こりやすいというのがレイ・ダリオ氏の考察である。

中立国であること


最後の条件として、レイ・ダリオ氏があげているのは、戦争に参加していない中立国であることだ。

私は海外との戦争を抱えうる国への投資は最小化したい。

というのも、レイ・ダリオ氏の研究によると、中立国のリターンは、戦争に勝利した国以上に良いらしい。

歴史によると、中立国は戦勝国以上にリターンを生みやすい。イギリスは戦争に勝ったが政府は破綻した。アメリカがたくさんのお金を手にしたのは、戦争への参加が遅かったからだ。

日本も朝鮮戦争の時には特需で経済が急成長したが、この時、日本は戦争に参加してなかった。戦争は勝っても負けても経済は大きなダメージを受けるのであり、戦争の特需を受けられる中立国こそが儲かるというのだ。

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結論:条件を満たす3つの国


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