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シリコンバレー銀行が経営破綻、米国債金利は低下へ

シリコンバレー銀行が突如として経営破綻しました。

米国は利上げを行なっていますが、金利上昇によって保有している債券に含み損が出ている中で、取り付け騒ぎ(預金の引き出し)が起きると、これらの債券の売却・現金化を迫られて、含み損が実現損になってしまいます。それがさらに不安を喚起して、預金に引き出しが進むと、このループを止められずに、経営が破綻してしまいます。

これを受けて、他の銀行にも不安が広がっており、米国債の金利は大幅に低下しました。

シリコンバレー銀行が経営破綻


米国テック企業などに積極的な融資を行っていたシリコンバレー銀行が経営破綻したというニュースが飛び込んできました。

シリコンバレー銀行グループの株価推移(2023年3月11日執筆時点)/ Google

ブルームバーグは、以下のように報じています。

銀行業界の一部は既に、金利急上昇によるポートフォリオ価値の毀損(きそん)に見舞われていた。またテクノロジー業界や暗号資産(仮想通貨)業界の新興企業の間では、事業不振の中で預金を引き出す動きもあった。SVBのケースでは、同行の健全性への懸念から顧客が資金引き揚げを急いだという事情もあった。コーネル大学のサウレ・オマロバ教授(法律)は「銀行の取り付け騒ぎは心理面からの影響が大きい。そして現時点で、神経質になるのは無理もない」と述べた。

昨年からの急速な利上げと金利上昇によって債券価格は低下しているので、債券のエクスポージャーが高い米国の銀行は含み損を抱えています。これらの債券を満期まで保有して償還を受ければ、その過程での含み損というのは特に問題がありません。しかし、今回のように不安が広がって預金に引き出しが始まると、話が変わってきます。

預金の引き出しに対応するためには現金が必要です。そのためには、債券を売らなければいけません。債券を売ってしまうと、含み損が確定して、実現損となります。つまり、実際に預金が毀損してしまうということです。これが信用不安を呼んで、さらなる預金の引き出しに繋がり、さらなる債券の売却を迫られます。

このループが回り始めると、大きな含み損を抱えている銀行は、あっという間に経営破綻に追い込まれるというわけです。

今の高金利に耐えられない米国経済


シリコンバレー銀行はそこまで規模が大きいわけではなく、これが単体ですぐに問題になるということはありません。しかし、今の金利水準に米国の金融システムが耐えられないということが表面化したため、今後は色んな信用不安が広がっていくでしょう。

リーマンショック以降、強力な規制を受けている銀行ですら、このような事態が起こるわけですから、シャドーバンキングと呼ばれているPEや融資ファンド等は、流動性の低い債権等まで含めてマーケット価格にあわせて適正に時価評価すると、莫大な含み損を抱えているはずです。

ハイイールド債や高リスクなクレジットのデフォルトなどが出てくると、格付けの低い債券の金利がさらに上昇して、そうした質の低い債券やクレジットを保有している金融機関の含み損も一層拡大します。そうなれば、いよいよ信用不安が社会全体に広がるでしょう。

債券王として知られるガンドラック氏は、年初からこうした事態を予想しており、本ニュースレターでも繰り返し、彼の見方を紹介してきました。

銀行の融資は3%程度の金利だった。FEDから3ヶ月遅れで融資金利は動くため、近々8%になるだろう。これは企業にとっては膨大なコストとなる。また同時に、融資先の状態が低クオリティの融資は40%-50%という水準から、70%-80%という水準にまで増加している。
1年後にはハイイールド債のデフォルト率が9%でも不思議ではないことを示している。

僕が「金利低下によるリターンは、株よりも債券で取るほうが望ましい」と繰り返し述べて、ポートフォリオのメインを米国債にしてきたのは、このような経済危機リスクに備えるためです。

米国債の金利は低下


シリコンバレー銀行の破綻と不安の広がりを受けて、2月のインフレ警戒相場で4%近くまで上昇していた米国長期金利は一気に3.7%まで下落しました。

米国10年国債金利(2023年3月11日執筆時点)/ Investing.com

本ニュースレターでは「4%近い米国長期金利は投資妙味がある」として買い増しの判断をお伝えしてきました。

3月〜5月は、そもそもインフレ面では前年比で減速を示す数値が出やすく、今回のような景気後退を意識させるニュースも出てくるのであればれば、やはり金利は下方向を見るのが素直な判断でしょう。

国内銀行株は利確を急ぐ


長期金利の上昇は、基本的には銀行株にポジティブですが、一方で債券やクレジットのエクスポージャーが多い銀行においては、このようなリスクが付いて回ることが確認されました。日本でも、債券での運用が大部分を占めている地銀などはリスクが意識される展開になるでしょう。

昨年の12月から保有している国内銀行株のポジションについては、以下のニュースレターでも「徐々に利確を進める」と書いてきましたが、ここまで十分に上昇してきたので、あまり欲張らずに速やかに利確を進めようと思います。

銀行株ETF(1631)の株価推移(2023年3月11日執筆時点)/ Google

結論


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