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サマーズ氏:FEDは将来の金融政策の柔軟性を確保すべき

元米国財務長官も務めたマクロ経済学者のサマーズ氏が、先日の米国GDPについて、Bloombergの番組でコメントしました。サマーズ氏は、在庫の増加などがGDPを押し上げていることを考えると、全体としてはコンセンサスを上回ったものの、このGDPの解釈は難しいという見方を示しました。また、FEDは将来の金融政策の柔軟性を確保すべきだとコメントしました。

米国GDPは内訳まで見ると判断が難しい


復習しておくと、米国実質GDPは前期比+2.9%(年率換算)で、コンセンサスの+2.7%を上回りました。一方、個人消費は+2.1%で、コンセンサスの+2.7%を下回りました。

今回のGDPについて、サマーズ氏は以下のように述べました。

GDPは良い数字に見えた。しかし、在庫による影響が大きかったりと、内訳まで見ていくと、そこまで強い数字には見えなくなってくる。そして、個人消費は予想を下回った。経済は非常に見通しが悪い状況にあると思う。好意的に受け取れる数字もあれば、そうではない数字もある。それは次のFOMCにおける判断を難しくするだろう。

僕自身、上のニュースレターにおいて、FEDが経済が強いと判断して、一段と利上げをするリスクもあれば、経済が強いままインフレが収まる可能性もあり、判断が難しい旨をコメントしました。

僕は、米国の金利上昇は一服したという前提で、債券をメインにしたポートフォリオを組んでいますから、金利がもう一段上昇するのであれば注意する必要があります。一方で、インフレが収まる中で、経済は強いままということであれば、株式を中心に上昇していく可能性もあります。

今回のGDPは、どう受け取れば良いのか判断に迷いましたが、それはサマーズ氏でも同様だと分かり、その点では安心しました。

FEDは金融政策の柔軟性を確保すべき


さて、このような状況で、日本時間の2月1日〜2月2日に開催されるFOMCですが、そこでFEDがどのような判断をすべきかについて、サマーズ氏は以下のようにコメントしました。

経済がどちらの方向に進むか分からない状況においては、最大限に金融政策の柔軟性を確保することに努めるべきだ。FEDは0.25ポイントの利上げをするだろうが、その後の見通しについて、あまり自信を示さない方が良いだろう。なぜなら、多くの不透明な要素があるからだ。

FF金利は、現在4.5%ですが、これを0.25ポイントあげて4.75%にするというのが市場のコンセンサスです。

ここまでは良いとして、サマーズ氏が気にしているのはその先です。FEDは最終的には、5%を超える水準まで利上げしていくという見通しを従来から示しています。それに対して、ガンドラック氏を始めとする債券市場の投資家たちは、FF金利が5%を超えることはないと考えており、FEDと市場それぞれの経済の見通しが割れています。

サマーズ氏は、FEDが「5%を超える水準まで利上げをする」という従来の見通しに固執せずに、場合によっては利下げにも転じられるよう、ドットチャートや記者会見において、金融政策の柔軟性を確保するような言動に努めることが重要だと述べているのです。

この四半期の数字から見えた経済の弱体化を考えると、利上げにコミットするのが適切な時期だとは思わない。

一方で、利上げを停止するといった緩和的な見通しも示さない方が良いというのが、サマーズ氏の意見です。

金融市場を見ていると、過去数ヶ月は金融緩和再開を織り込むように動いてきた。そうした動きは、FF金利だけを見ていては分からない、緩和的な影響を経済に与えている。FEDは金融政策を考えるにあたって、そうしたことも考える必要がある。だから、利上げの可能性を取り除くタイミングではないだろう。

サマーズ氏の言う通り、また何度も紹介してきたことですが、様々な金利の基準となる米国長期金利は昨年の10月にピークをつけてから、順調に下落を続けています。僕が債券ロングのポジションを立てているのは、こうした金利低下の恩恵を受けるためです。

米国長期金利(2023年1月28日時点)/ Investing.com

ということで、FEDは0.25ポイントの利上げをしつつ、「すべては経済状況次第だ」といった将来の柔軟性を確保するようなコメントを出すことになると想定しています。債券市場は、それをどちらかといえば将来の金融緩和再開を示唆するものだと受け取るのではないかと思います。

結論


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